雑誌取材記録! of Children of Asia

雑誌取材記録
1996年「ソフィア」VOL2・VOL3に掲載されたものです。

「飯野 マリア・カルミーナさんに聞きました。」 (取材掲載記録を一字一句変更せずに転載致します。)
聞き手: 花房 典子
「ソフィア」VOL2・VOL3に連載しましたボランティアグループ「アジアの子供たち」で代表をされておられる飯野 マリア・カルミーナさんに昨年の12月8日お電話をし、取材をさせていただきました。いつも会報等を送っていただいていましたが、一体どんな方なんだろう、と思っていました。お話しする間に、とても親切で言葉のきれいな方だな、という印象を受けました。


花房: どこのお生まれですか?
飯野: フィリピンです。
花房: 失礼ですがおいくつでしょうか?
飯野: 38才です。
花房: ご結婚は?
飯野: はい、しています。
花房: どういう出会いだったのですか? お相手は、フィリピンの方? それとも日本人かな・・・?
飯野: 今から14年も前のことになります。日本の横須賀米軍基地の中で仕事をしている私の知人から突然、国際電話が入りました。友達が、フィリピンに1~2ヶ月滞在するので、滞在先をどこか世話してくれないかと云うお話でした。長期滞在するので、ホームステイ先を紹介してほしいということだったのです。
適当なホームステイ先が見つからず、仕方なく私の家でお世話をすることになったのです。あらわれたのは、肩まで伸ばした長髪にジーパン姿のかれで、カメラマンでした。片言の英語、それも辞書を片手にしての会話がかえって親近感を持たせることになったのかもしれません。フィリピンでのガイドなど、お世話をしてあげたお礼に、今度は私が日本への観光旅行に招待されることになったのす。私は、海外旅行など初めてでしたから、それはもう夢のようでた。
でも、その時はまだ結婚するなんて、少しも思っていなかったんですよ。それがずっと日本にいることになるなんて・・・。運命ってわからないものですね。
でも、今はとても幸せです。
花房: そんな素敵な出会いってあるんですね。では、結婚式はどちらで?
飯野: 日本です。
花房: 子供さんはいらしゃるのですか?
飯野: 12才になる双子の男の子がおります。現在小学6年生です。
私の自慢の息子たちについて、少しお話しさせていただきます。一卵性双生児として生まれた息子達は、主人の仕事の関係もあって、0才のときからモデルをしておりました。花王メリーズのテレビCM(紙おむつのCM)にはじまり、明治製菓、マクドナルド、ロッテリアのテレビCM。ポスターやパンフレットの関係では、NTT、トヨタ、日立、東芝、三越、松坂屋、ダイエー、ジャスコ、あそう、ほか多数。幼児雑誌、そして映画にも2回出演していますよ。東宝映画「子象物語」と松竹映画「ほんの5g」。どちらもちゃんと名前がでているんですよ。小学校三年までやらせました。勉強が忙しくなったので、やめさせたのです。
学校では作文コンクールなどに多数応募して、都知事賞、環境庁長官賞、東京郵政局長賞などなど、二人の賞状を合わせると10数枚になります。そんな子供たちも、最近ちょっと反抗期で寂しい気持ちになっています。脱線、だっせん、ごめんなさい。本題に戻りましょう。
花房: いえ、いえ、幸せなお話し、もっと聞かせて下さい。私も幸せな気持ちになってきます。一つ疑問があるのですが・・・。何故、飯野マリア・カルミーナさんという長い名前なのでしょうか?(結婚されてなのでしょうか?)
飯野: MA.CARMINA IINOと書きます。マリアのMA.は、クリスチャンネームです。
結婚前は、マリア カルミーナ メンドーザでした。名前長いですよね。マリアだけで結構ですよ。マリアと呼んでください。
花房: では、マリアさん、日本に来られたのはいつ頃ですか?
飯野: 昭和58年1月来日です。
花房: それじゃあ13年前ですね。とてもきれいな日本語を話されますが、どちらでいつ勉強されたのですか?
飯野: フィリピンで大学時代に少し勉強はしましたが、あまり効果はなかったようです。
日本に来てまもなく、主人が出張で北海道へ。一週間も一人ポッチでずいぶん寂しい思いをしました。勉強をする時間はたっぷりありましたので独学で必死に学びました。また主人が大変言葉づかいにうるさかった、よかったと思っています。
公文式の指導者試験にパスするためにも、必死で勉強しました。夜中の2時3時まで勉強することもめずらしいことではありませんでした。公文式指導者は、私がはじめてと聞いています。現在は、算数・数学、国語、英語、幼児、日本語(外国人のための)を教えています。いずれ、独語、仏語の資格も取りたいと思っています。
花房: 最初の日本の印象はどうでした?フィリピンとは違うところがありますか?
飯野: 日本は、とてもきれいな国だと思いました。またルールが守られていて、人々は勤勉だと感じました。フィリピンでは、信号を守らない人がいっぱいなんですよ。仕事も少なく、失業者がいっぱいです。日本は豊かでうらやましいと思いました。お友達に恵まれて、私の周りにはいつも親切にしてくれる人々がいて、助けてくれました。国際交流協会の推薦で、港区の代表として都知事との懇談会に参加させていただいたり、区長との懇談会にも出席しました。現在、港区区政50周年実行委員会として、ジャーナリストの兼高かおるさんたちと会議を続けています。
花房: フィリピンはどのような国ですか?行ったことはありませんが、私のフィリピンのイメージは、いつも暖かく、海で泳げて、ヤシの実やパイナップルなどのフルーツがたくさんあって、明るく陽気で親切な人ばかりの島というのが浮かびますが・・・。
飯野: お答えしましょう。一年中暑く、海がきれいで、自然がすばらしいですよ。
日本にはない果物があちこちに。庭先にもなっています。陽ざしは強く、突然シャワーのような雨が降ったりして、子供たちはそれをけっこう楽しんでいるんです。でも、雨期ともなると台風も強く、昨年(95年)などずいぶん大きな被害も続きました。ピナトウボでは、火山灰の泥流被害も繰り返しおきています。
家族は、三世代一緒の大家族が多いですね。家族愛というか、肉親の結びつきは日本よりずっと強いと思います。信仰心は、大変に強く、教会とのつながりも大切にしています。


花房: ボランティアを始められたきっかけは?
飯野: 私は東南アジア教育支援活動を始めて7年になります。初めに少し話しましたが、私は長年にわたり公文式教室の指導者として、たくさんの日本の子供たちを教育してきました。日本の子供たちは、学校教育とは別に、学習塾、ピアノ、水泳などに通う子も多く、大変恵まれた教育環境です。これに対し母国フィリピンの子供たちの教育環境は、とてもひどい状態です。学校へ行くことのできない子供たちもたくさんいるのです。学校の設備、備品においても不十分であり、教科書すら不足しているのです。学校に通う子供たちの中には、裸足の子もいるのです。この子たちに、鉛筆やノートを買い求める力はありません。彼等は、未来に夢を持てるのでしょうか。
母国フィリピン・マニラ市の北に、東南アジア最大のスラム“スモーキマウンテイン”があります。このゴミの山に生まれ、住み、資源ゴミを拾い集めることで、日々の生計を立てる彼等に学校教育を受けるだけのゆとりなどないのです。
フィリピンにおいても、この地域は特別な場所ではあります。しかし、フィリピン全体を見ても、この国の教育環境は決して良いものではありません。この現実を知り、私は母国の子供たちのために何とか力になりたい、一人でも多くの子供たちが学校教育を受けられ、未来に大きな夢を持てるようになってほしい、との一念からたった一人で、7年前活動を始めたのです。
花房: えーつつ!たった一人で・・・!本当に心から母国の力になりたいと思っていらっしゃるのですね。
熱心な気持ちが伝わってきます。それでは、どのような活動をされたのですか?
飯野: 粗品や広告イベント等でもらった鉛筆、ノート、定規、消しゴムなどの文具・学用品を、母国への里帰りのときに持ち帰りました。
そして、小学校を訪ねたりしてみんなに配っています。
最初は段ボール箱2個ほどでしたが、やがて沢山の人々の協力を得られるようになりました。今では新聞、雑誌、ラジオなどでもご紹介をいただけるようになり、全国各地から学用品が送られてくるようになりました。
花房: 他にはどのような荷物を送られたのですか?
飯野: 年4回の支援物資定期発送のほかに、ピアノ、エレクトーンなども送ることができるようになりました。
昨年(95年)は、大規模な台風被害も多く発生したため、緊急支援として衣類なども多数送りました。私たちは、全国の皆様方からご提供いただいた支援物資が滞ることなく、今、本当に必要としている人々のもとへ、速やかに届けることができるように、頑張って支援活動を継続してゆきたいと考えています。
花房: 日本からフィリピンでしたら、運送費がとてもかかりそうですが・・・。
飯野: はい。支援物資の輸送には、船便で10Kgあたり約4000円の費用がかかります。※現在の価格とは異なります!  輸送費には、[いちご募金](1円、5円など小銭の募金)のご協力をいただいておりますが、まだまだ不足しています。ご家庭で、職場で、日頃コツコツと貯めていただいた小銭を送りください。
専用の募金缶もありますので、ご希望の方はご連絡ください。
    お振込みは、郵便局で下記の口座へお願いします。  [郵便振替] アジアの子供たち 10150-37257151
※ゆうちょ銀行に変更後は口座番号が変更になっています!
     〒108東京都港区高輪3-19-23-503
                 03-3449-1469
                代表 飯野マリア・カルミーナ
皆様方からお送りいただいた支援物資の現地発送が、輸送費の不足から遅れることもしばしばあります。
支援物資のご協力と共に、輸送費の一部をご負担いただければ幸いです。
花房: 会員は何名いらっしゃるのですか?
飯野: これまでにご支援、ご協力をいただいた方々は、個人、学校、会社、市民団体などを合わせて約230名(学校、会社、団体も1名として数えています)が、会員として登録されています。支援物資の仕分け発送などは、10名ほどの会員が交代でやっています。
花房: ボランテイア活動をしていて良かったと思うことは?
飯野: このボランテイア活動を通じて、多くの皆様方と知り合うことができたというが、私にとっては最大の宝であることは間違いありません。また、現地の子供たちからの喜びの手紙が届いたときなど、とても嬉しく、活動を続けていて本当に良かったと思います。
花房: 最後にメッセージはありますか?
飯野: [アジアの子供たち]は、まだまだ小さく力もありません。皆様方のご支援、ご協力なしには成り立ちません。皆様方のご指導、アドバイスをいただきながら、より一層充実したボランテイア活動にして行きたいと考えています。
今までに何度もご協力いただいている学校、会社、市民団体、そして、個人でご支援いただいている皆様、引き続きご協力いただきますよう、宜しくお願い申し上げます。

( 以上が掲載記事です。)

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